採集記 2002.07.07〜08 新潟/山形編



プロローグ


昨年から微妙に季節の進みがズレているような気がする。
一昨年までは9月の中旬でもオオクワの採集が充分に出来たのであるが、昨年は8月31日の新潟の夜、気温が14℃くらいであった。
冬が終わり、春になるのも妙に早く、ひょっとしたら今年のオオクワのシーズンもかなり早まるのではないかと考えていたのである。
昨年は6月中旬頃から採集報告が聞かれた。
ならば、今年は6月頭から採れるかも知れない。
そんなことを考えていたら、予想通り、6月1日に新潟でオオクワ2♀が採集されたと言う報告が入った。
月齢も良し。
これはいよいよ採集が始められそう、と言うことで、6月7日から新潟に行くことにしたのである。
今年こそ! 今年こそ農耕民族に対抗するぞぉ!
...と、毎年思っている、のだが...



初日---新潟


と言うことで、新潟のポイントを目指し、昼頃に家を出た。
高速代の節約のため、ひたすら一般道を進むのである。
午後3時頃、前橋の市内を走っていると、本日の同行者スズリさんから電話が入る。
 「もう現地に着いてますよぉ」
 「おぉぉ! 嘘っ!」
なんとまぁ、気が早い。
どうせ8時過ぎじゃなければ採集できないのに。
と、思ったものの、そう言われると気がはやる。
「しまった」と思ったときには、すでに渋川から関越に乗ってしまっていた。
仕方が無いので、関越トンネルを抜けるまで高速を走り、湯沢からまた一般道へ。
後はひたすら走り、現地到着は7時頃であった。

まず、最初のライトトラップポイントに着くと、2組がセットしてある。
が、今回同行者の群馬組では無さそうなのでパスして次へ進む。
次のライトトラップポイントを探すが、見つからないうちに一番上に出てしまった。
んん...昨年と道路の雰囲気が変わっている!
ま、確かに昨年まで道路工事の現場の水銀灯で採集をしていた。
従って、雰囲気が変わっているのもやむを得ないのであるが、それにしてもあっと驚く豹変振りである。
どうやら、工事は終ってしまったらしい。
へっ?
んじゃ、私はどこで採集したらいいんだろうか?
(なんて、本当は前もってある程度この状態は知ってはいたのだが...)

で、少し戻ってみると、いた、いた。
群馬隊のライトトラップを発見、挨拶に寄る。
メンバーはnamihiroさん、HIROさん、スズリさん、佐渡2号さんであった。
クワガタの採集は、採集そのものも楽しいのであるが、こんな仲間たちとの会話がまた楽しい。

が、そうこうしているうちに空が段々暗くなってくる。
「それじゃ私は外灯回りに行きますんで」
と言うことで、後ろ髪を引かれながら外灯ポイントに向かう。
車を走らせること10数分?
時計を見ているわけではないので、時間ははっきりわからない。
が、ようやく外灯ポイントに到着。
そこには既に採集者の姿が。
知らない人ではあったが、そこは同じクワガタ好き同士。
挨拶をして、状況などをうかがう。
まだ何も来ていないようだ。
まぁ、同じ所で採集してもあまり面白くないし、もともと一箇所に留まるつもりも無いので、次の外灯の所に行くことにした。
ここは、一本の水銀灯と、何本かのオレンジ色の外灯が並んでいる。
通常、オレンジ色の外灯ではあまり採れないのであるが、何故かここはオレンジ色の外灯に来る。
オレンジ色といってもナトリウム灯ではなく、水銀灯にオレンジのカバーがかかっているだけなのかも知れない。
車を降り、まずは歩いてみる。
すると、早速クワガタを発見。
小さいながらもミヤマ♂であった。
幸先が良い。
「もしかして、今日は灯火採集に勝ってしまうんじゃないか?(笑)」
もちろん、こんなことを声に出して言ったりはしない。
密かに心に思うだけである。

このポイントを何往復かし、時々さっきの採集者がいたポイントにも行ったりしているうちに、ポツポツとミヤマが採れる。
が、肝心のオオクワは来ないうちに刻々と時間が過ぎてゆく。
「うっ、まずい!」
そろそろオオクワが来ないとゴールデンタイムが過ぎてしまうのである。
それから一気に必死になって探すが、相変わらず採れるのはミヤマばかりであった。
そして...
「がぁ〜ん!」
時計を見ると既に11時前。
今日もオオクワは採れなかった。
どうも、この新潟ポイントとは相性が良くないらしい。
きっと灯火組は採れてるんだろうなぁ。

仕方なく、あきらめて灯火組の元へ戻ることにした。
群馬組の灯火ポイントへ戻る途中、他の灯火採集者が気になる。
「様子だけでも聞いていこうかな」
と車を寄せ、歩いてゆくと、
「あれっ? 知ってる人だ。」
何とそこにいたのは、スーパーなべさんと福井の湯本さんであった。
「どうですか?」
と聞くと、スーパーなべさん、
「2♀採りましたよ。湯本さんは採れてないのですが、上では3♀出たみたいです。」
上と言うのは、群馬組のことである。
う〜、負けた!
悔しいのであるが、それぞれ1年ぶりくらいの出会いである。
ま、出会いと言っても、大概採集に来ると誰かに会うのではあるが...
久々の会合に話が弾んでしまう。
「まっ、その内、群馬組もここに寄るでしょう。」
と言うことで、しばらく話を続けていると、案の定群馬組が戻ってきた。
やはり3♀採集したとのこと。
HIROさんが2♀、佐渡2号さんが1♀採集したらしい。
う〜ん、悔しくはあるのだが、やはりここでは灯火にはかなわない。
まぁ、明日もあることだし、ここはじっと我慢しましょう(笑)

と言うことで、今度は群馬組も含め歓談。
「タカさんはこれから会津に向かうんですよね?」
と水を向けてもらったのを期に、
「そうなんですよ。明日別件で会津若松に用があるもので...。そろそろ出発しようかな。」
と言うことで、離れることにした。
もちろん、途中途中の外灯はチェックしてゆくつもりである。
時間はちょうど12時頃であった。

この日の成果:ミヤマ6♂1♀




二日目---山形


さて、翌日。
(昨夜の途中の外灯ではコクワ一匹見つからなかった)
会津若松での用事を済ました後、
「これから夜まで何をしようかなぁ」
本当は温泉にでも浸かって、のんびりとすごす予定だったのである。
が、思いがけず用事が早く済んでしまったのだ。
「昼寝でもしてるか...」
と思った目の前に地図があった。
「ん...もしかして、ここからなら山形も近いんじゃないか?」
確かに近いのである。
が、よ〜く考えてみれば帰りは遠い。
しかし、昨年から山形に行きたくて仕方ない私にとって、そんなに良く考える冷静さは残っていなかった。
「よっし! 行っちゃおう!!」

そして来てしまった、山形ポイント。
予想以上に時間がかかり、到着したのは5時頃であった。
チョット昼寝の後、いよいよ行動開始。
時間は午後7時半である。
さすがにここは遠く、午後10時までの採集と決めての採集開始であった。
まず、昨年来たときに♂の死骸を見つけたところに行くが、さすがに時間が早いのか何もいない。
徐々に奥に向かって進む。
この日の初採集は午後8時過ぎ、コクワ♂であった。
外灯がある範囲を往復し、スタートに戻る。
この間の成果はミヤマ1♂(小)、コクワ7♂1♀のみ。
思ったほど成果が上がらない。
もう一度奥まで進み、戻ってくる途中、水銀灯と水銀灯の間にある暗い街灯の下でミヤマを発見。
車から見ていても結構でかい。
今回最大の獲物である。
正確にサイズを測ったわけではないが、65mmはオーバーしている。
子供の友達へのお土産として、持って帰る事にした。
が、遂にここまででまたスタート地点に戻ってしまい、時間も終了予定の10時を過ぎてしまった。
「あ〜あ、結局これまでかぁ」
本当はもっと探したい所なのであるが、さすがに帰り道は遠い。
諦めて帰る事にする。

最後の最後、ラストチャンスを狙い、帰りの道すがら外灯をチェックして行く。
もうこの頃には神様頼りである。
「オオクワ! オオクワ! 一頭でも良いから何とかオオクワ!」
心の中で、必死に叫びながら外灯を見る。
いや、多少声に出ていたかもしれない。
が、コクワ2♂を追加するも、本命は来ない。
そろそろ、本命ポイントも終わりかという頃、脇道に水銀灯の明るい光が見える。
ここは、さっき来たとき他の採集者がいたために寄らなかった水銀灯である。
「駄目だと思うけど、一応寄ってみるか。」
道を曲がり水銀灯に近づくと、クワガタの姿が見えた。
「あっ、クワガタ! ♀だ! 黒い!」
「ノコかなぁ。 ミヤマかなぁ。 でも、もしかして...」
期待は段々高まる。
が、ここで焦ってはいけない。
あまり期待しすぎると、裏切られたときに反動が大きいのである。
懐中電灯をつかみ、さりげなく車を降りる。
ゆっくりとクワガタに近づいていくと...
「!!!」
黒々とした背中に、筋が見えた。
「った! やた!! やったぁ〜!!!」
最後も最後、本当に最後の逆転さよなら満塁ホームランであった。



エピロローグ


これをもって今回の採集を終了。
帰りは本当に遠い道のりだったのだが、最後の最後に念願をかなえ、ルンルン気分であっという間に家に帰ってしまった。
(嘘。やっぱり帰りは遠かった。)
家に着いたとき走行距離は1157km。
当然既に日は昇っていた。
本当に馬鹿だなぁと思いながらも、
「また行こう!」
と、心に決めていたのであった。

この日の成果:ミヤマ2♂、コクワ9♂1♀、オオクワ1♀





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